2023-01-01から1年間の記事一覧
流行りのハンバーガー屋がホールの一角に店を出していたので、試してみることにした。某サンド屋のように、数あるトッピングを選んで自分好みにカスタマイズできるところが人気の理由らしい。 わくわくしながらメニューを覗くと、「ポテロング味」という魅惑…
その日はどんよりとした天気で、家々のコンクリートと分厚い雨雲により、外は一面白みがかった灰色で覆われていた。私の住まいは細長いビルの上のほうにあるが、エレベーターも階段もなく、吹き抜けにかかっている錆びた梯子を登っていかなければならなかっ…
いつもの5人組で訪れたその店は、1階が広々としているのに対し、2階は狭く、少し座りづらい構造になっていた。以前来たときは予約なしでも1階に通してもらえたが、今回は満席だったので、2階へ案内された。2階もほぼ満席で、なんとか5人座れるくらいであっ…
もうすぐ地域の大きな祭りがある。私は建設検討班として、企画メンバーの一員に組み込まれている。本日15時頃から住民の方々と顔合わせがあるのだが、同じ班にひとり、大変いけすかない奴がいるのがストレスになっている。 私はかなり悩んだ末、打ち合わせの…
マックで朝ごはんセットを頼んだ。店員さんがエッグマフィンとサラダとコーヒーをトレイにのせる。それで全てかと思いきや、さらに卵入りごはん、鯖の塩焼き、味噌汁までついてきた。私は何も言っていないのに、店員さんが茶碗にごはんをよそいながら、 「こ…
いつものように自分の上履きを受け取って、作業場まで移動する。私は回転椅子に座って高速でタイヤを回しながら進む。今日は、少し変わった人として広く知られている人が、後ろから来ていて、追い付かれないか不安になる。 今日は友人が主任する作業の補佐と…
ひどく苦しい晩であった。熱はとうに下がったのに、咳だけがゴホゴホといつまでも止まらない。一度始まると、吐きそうになるまで咳き込み続け、そばに置いてあるお茶を無理やり流し込んで止めるほかはないのである。 ただ、私には、なぜ自分が咳をしなければ…
海外旅行に来ている。身分不相応な豪華なホテルに泊まったため、一晩泊まっても、入口の2部屋しか使うことができなかった。なんだかもったいなく感じ、チェックアウトの直前で全ての部屋の中を探検することにした。 中国の山奥の昔話に出てきそうな畳の部屋…
外へ出ると、綺麗な絵画のような朝の空が広がっている。はるか遠くで薄水色と深い紺色が混ざり、広場の木の葉からはたくさんの光の粒が湧き出てきて、鳥の群れのように弧を描きながらくるくる回り、どこかへ飛んでいった。 あれは全ての光を吸収する究極の黒…
カワウソが1匹脱走してしまったので追いかけた。すると、 「塀を乗り越え海へ逃げ出し、そして死んでしまった」 というナレーションが聞こえてきたので、(え、カワウソ死ぬの!?)と驚いた。 もし本当に死ぬ運命にあろうとも、それに抗わなければならない…
大阪の街を南北に貫くあの大きな国道は、夏はプールとして利用される。私は超高層ビルの上や上空を飛ぶヘリコプターから、その様子を眺めている。クロールで泳ぐ人、浮き輪に乗って水の流れに身を預ける人、たくさんの人々の小さい丸い頭が、細長い容器で洗…
友だちとスノーキャッチボールをする約束があったので、狭隘な雪のトンネルを這い登り、なんとかゲレンデにたどり着いた。しかし到着してから、約束を1日早く勘違いしていたことに気がついた。 どこか一晩泊めてくれるところはないかと、あちこち歩き回って…
私はイタリアンレストランで食べ残したパスタの皿を見つめていた。パスタのとなりはアイスティーが2つ並んでいる。食べる前に写真を撮り忘れたのだが、ここへ来た記念にどうしても記録を残しておきたくて、インスタ映えする角度を探っていた。 テラスの外に…
東京日本橋の雑居ビルの最上階で、どこか食べるところを探していた。寿司屋はオープンな造りになっていて、短い暖簾がかけられているだけで、外から中の様子がよく見えた。4人掛けの机がいくつか並べられていて、2,3人の客が座っている。食事をしていると…
大型レジャープール施設に遊びに来た。みんなが泳ぎ続けるなか、早々に力尽きてしまった私は、先にあがってのんびり待っていようと、更衣室へ向かった。プールと更衣室は3本アームの回転式ゲートで隔てられていた。何も考えずに出てしまうと、プールのほう…
暗い夜道をひとりで歩いている。高架下に差し掛かると、前からものすごく背の高い欧米人がやってきた。手話を使って何か聞いてきているようだが、自分は手話を知らない。両耳に指を差し、両手を前で合わせてお辞儀して、「自分は耳が聞こえるから手話が話せ…
ごついタイヤのチャリに小さな女の子を乗せて、恐る恐る坂を降りる。急に物陰から飛び出してくる人たちがいるので、うっかり轢かないように細心の注意を払うが、スピードが出ないようにブレーキをかけ続けていると、逆にバランスをとりづらい。 案の定横倒し…
夜、リビングでくつろいでいると、電話がワンコールだけ鳴ってすぐに切れた。FAXが1枚届いていた。 「てさ ひろし」 という文字の下に090から始まる電話番号が書かれている。 すぐにまた電話がワンコールだけ鳴り、FAXが1枚送られてきた。先ほどと似たよう…
もうすぐ嵐が来る。そのことを自分だけが知っている。地面の蓋を開け、人ひとりがやっとすり抜けられるほどの狭さの、筒状シェルターの中に身を隠した。シェルターの入り口は狭いものの、中は生活するには申し分ない広さで、なかなか快適に過ごすことができ…
友だちが横の棚に目を向けている隙に、洗面台の腕時計2つに手を伸ばして掴み取り、足早にその場を去った。すぐに彼女が追いかけてくる気配がしたが、後ろを振り返るのが怖くて、走って逃げた。 彼女はもうすぐ授業があるので、最後までは追いかけては来なか…
ふと鏡を見ると、腹が出て腕が太くなり、毛深くなった自分の姿が目に映った。顔も半分ほど赤くなっている。アレルギー反応のようなので、薬をもらい、とりあえず人のいる職場で様子を見ることになった。 インターホンが鳴ったのでモニターを確認すると、真田…
その学校では、直に触れる学びを大切にする、というモットーを掲げていた。歴史の教室には簡単に作られた当時の機械が何台か並んでいて、生徒たちはそれらを実際に操作することで文明の発展を学ぶのであった。 そのほかの科目では、基本的に自主学習の形がと…
急いでトイレに駆け込みドアを閉めると、誰かのパーカーの紐を挟んでしまったらしい。挟まれた人が何か叫んでいるので、交渉をするため慌てて個室から出た。当然その人は怒っていて、お詫びの品を取りに戻るため、財布と時計を預けて、雪の降る夜の道路へ飛…
南南雲島20に帰ってきた。船から降りて、大勢の乗客たちと壁沿いに右へ右へと進む。いつの間にか腰まで海水に浸かっている。溺れないように気をつけながら岩肌によじ登る。 我々はいつの間にか学校のような建物の中を歩いていた。机が並べられた一般的な教室…