友だちとスノーキャッチボールをする約束があったので、狭隘な雪のトンネルを這い登り、なんとかゲレンデにたどり着いた。しかし到着してから、約束を1日早く勘違いしていたことに気がついた。
どこか一晩泊めてくれるところはないかと、あちこち歩き回って見つけたヒュッテは、温かい木目調の広々とした小屋で、ひとつの大部屋に、ベッドやソファがあちこち置かれてあった。スノボとスキーの板を背負ってうろうろしていると、奥のほうから小さなおばあちゃんが出てきて私に声をかけた。
「お客さん、今日は泊まりかい?あいにく今晩はいっぱいなのだけれど…」
「邪魔にならないところで雑魚寝させてくだされば、それで結構ですので、どうか…」
と頼み、寝転がれそうな場所を探して歩いた。
そのような場所はいくらでもあるように思えたが、問題は、猫である。このヒュッテには猫がたくさんいる。私が連れてきた猫もいるので、間違えないようにしなければならない。青と白のぶちの猫で、目は丸ビーズのように小さくてつぶらだが、笑うと丸括弧を二つ並べたようにニコニコして大変かわいいのである。私はリュックから頭をのぞかせているうちの猫を抱き抱え、膝の上へのせた。するとすぐにヒュッテの猫たちとじゃれあい始めた。
友だちと落ち合う予定のカフェは、大通りに面したところにあるのだが、なぜか父親が、未成年援助交際の疑惑話などを持ち出して気にかけてくる。信頼されていないことに腹が立ち、父のスマホを奪い取って、Googleマップにその店の名前を入力して突き返した。
怒りのままに外へ出て歩いていると、どこか懐かしい場所へ出た。市街地の真ん中の小さな山の中に、さびれた人気のない通りがあり、民宿のような雰囲気の建物がいくつか並んでいる。昔よくここを通っていたような気がする。なぜか片想い人に会える気がする。ずっとこの場所に立っているとそんな気持ちになってくる。
この山はもうすぐ開発によって切り崩されてしまうらしい。建物の反対側には、開発の概要について説明している、ジオラマのショーケースとパネル展示が並べられている。
私はワインを注射器で吸い上げ、目に垂らす。