夢日記

書き留めた夢を文章にして公開しています

231203

 その日はどんよりとした天気で、家々のコンクリートと分厚い雨雲により、外は一面白みがかった灰色で覆われていた。私の住まいは細長いビルの上のほうにあるが、エレベーターも階段もなく、吹き抜けにかかっている錆びた梯子を登っていかなければならなかった。梯子を登ればすぐに各階共同の手洗い場があるが、こんな寒い日でも水しか出ない。ポツポツと雨が降ってきたが、まともな屋根もないので、床にはすぐに水たまりができる。私は手をかじかませながら梯子を登っていく。冷たい雨風が頬に吹きつける。

 隣のビルのテラスでは、政府要人の接待が行われている。私はその様子を覗き見るため、屋上まで登ることにした。しかし、屋上の一個下の階まで来たときに、向こうのビルの壁に妙な人影があるのに気づいた。手に何か隠し持っている。直感で襲撃犯だと分かった。不審な人影はテラスの要人たちに近づいていく。襲撃を止める手立てはないと悟り、仲間だと思われないように走って逃げた。梯子を丁寧に降りる余裕もなく、ええいままよ、と梯子の一端を掴んだまま、ビルから飛び降りた。

 友人と母校の文化祭に来た。部活の顧問は変わってしまい、すでに我々の知っている後輩はみんな卒業してしまっていた。しかし、卒業生の作品コーナーに、直属の後輩のコレクションが展示されていた。昔の人が描いた版画のイラスト集である。パラパラとページをめくると、私の友人やそのお母さんと東京の下町を観光したときの写真が入っていたりする。私の知らない間にみんなで遊びに行っていたことに少しショックを受けるが、団子屋の前でピースしているみんなの楽しそうな顔を見ていると、どうでもいいかと思えてくる。

 小田原市役所の2階の食事処で鍋をつつくことにした。通された座敷は周りをガラス戸で囲まれていて、外の景色がよく見える。雨は上がっていて、中は暖かいが、澄んだ冬の空気感が伝わってくる。

231102

 いつもの5人組で訪れたその店は、1階が広々としているのに対し、2階は狭く、少し座りづらい構造になっていた。以前来たときは予約なしでも1階に通してもらえたが、今回は満席だったので、2階へ案内された。2階もほぼ満席で、なんとか5人座れるくらいであった。

「1階の客に交渉して2階へ移って貰えばよかったのに」

と誰かが言う。

 ちょっとそれはいかがなものか、と反発しようとすると、隣の団体客のひとりが「勝手なことばっかり言いやがって」と声を荒げた。彼の言うことには全面的に賛同するが、ちょっと呟いただけの言葉に強い口調で突然割り込まれたので、みんなが煙たがっているのに加わり、私も迷惑そうな顔をしてみせた。

 しばらく店で過ごし、さあそろそろ帰ろうか、と席を立とうとするが、2人ほど、奥の方をじっと見て動かない。彼らの視線の先には、和装の老人が畳の上に立っていた。落語でも始まりそうな雰囲気だったが、老人は組み手の達人であり、これからみんなで彼の指導を受けることができるらしい。

 上裸になり、ナイフを両手に持ち、あれやこれやと動いていると、ドアの向こうに何かただならぬものの気配を感じた。恐る恐る近づくと、突然、空中に手が現れた。恐れ慄いていると、続けて子どもの頭が現れた。それぞれ空中に浮かんでいる。手とは握手を交わし、子どもの頭は包み込むように抱えて撫でてあげた。

 すると子どもは全身の姿を現し、老人と共に棺に入り、膝を抱えた。いつのまにか、いつぞやにお世話になったGLも2人に挟まれて膝を抱えている。

 撮った写真を共有してほしいと誰かが言うので、カメラを回収しに祖母を探す。そういえば母から受け取った巨大なブロッコリーを返品しなければならないのだった。八百屋に向かっている途中、母を見つけた。大声で呼びかけても気がつかない。持っていたブロッコリーをやさしく母に向かって投げる。ブロッコリーは母の頭にやさしくヒットし、母はようやく振り返る。

 そろそろ時間がなくなってきた。GLに借りた1万円とお礼の品を買いに行かなければならない。GLの所属部署に出向くと、友人が3人、すでに座ってGLと話をしている。私もそこに加わり、返そうとお金を取り出した。はずだった。お金だと思ったものは、コンビニでよく貰うビニールに入ったおしぼりだった。

 今度こそお金とお礼の品を調達しに、再び離席する。席を立つ間際、

「こんないい夢を見たんだよ…」

とGLがみんなに語りかけているのが聞こえた。続きが気になるが、とにかく急がなくては。

 夢は空を自由に飛べるのが利点である。時短のため、窓から飛び出して、坂の上の商店街へ低空飛行で向かうことにした。

 お店でポチ袋を選ぶ。長生きの象徴である鶴は、これから成仏する人には嫌味になってしまうかもしれない。色彩豊かな鯉の柄か、黄土色の大きな月を背景にうさぎがたくさん跳ねている渋めの柄か、どちらにしようか迷う。

 でも、もう出発の時間を過ぎているかもしれない。みんなにおいていかれたかもしれない。

230908

 もうすぐ地域の大きな祭りがある。私は建設検討班として、企画メンバーの一員に組み込まれている。本日15時頃から住民の方々と顔合わせがあるのだが、同じ班にひとり、大変いけすかない奴がいるのがストレスになっている。

 私はかなり悩んだ末、打ち合わせの直前になって、全て放り出して逃げた。どうせメンバーは大勢いる。私はたいした役目も持っていないし、一人逃げたところで誰も気づかないだろう。

 そう強がりつつも、道中、他の班の人たちがきちんとした服装で民家に入っていくのが目に入り、急に疎外感に襲われた。頭が冷んやりとして、体の力が抜けていくのを感じた。

 軽い気持ちでバックれたことを後悔し、かといって今さら元いた班に戻る勇気もなく、隣町の祭りにエントリーしようとスマホをいじる。なんとかエントリーに成功し、現地に向かおうとするが、電車を使わないといけないのに駅の反対側に向かって歩いてしまう。情けなさがピークに達する。

 歩道橋の眼下には、朱色に光る提灯をブドウのふさのようにたくさんつけた竿を持った人が、道幅いっぱいに横並びになり、非常に長い列をつくってゆっくりと歩いている。提灯のついた竿が縦横にいくつも連なって、さらにそれぞれの竿がゆっくりと上下することで、まるで一頭の龍がうねりながら前へ這い進んでいるようである。

 空がだんだん暗くなってきて、提灯の明かりがくっきりしてきた。私は思いがけず良い景色を見られたことで機嫌をよくして、みんなの写真を撮ることにした。(とりあえず家に戻ってカメラを取ってくるか)と一輪車で横断歩道を渡り始めた。

230815

 マックで朝ごはんセットを頼んだ。店員さんがエッグマフィンとサラダとコーヒーをトレイにのせる。それで全てかと思いきや、さらに卵入りごはん、鯖の塩焼き、味噌汁までついてきた。私は何も言っていないのに、店員さんが茶碗にごはんをよそいながら、

「こんなに食べられる?残してもいいよ」

と言って、勝手に少なめにされた。

 確かに品数が多すぎて食べ切れるか不安だったのだが、意外とちょうど腹いっぱいくらいで食べ終えた。そこへ会社の同期が2人やって来て、ふざけ始めた。複数人で食事をしたときの会計のやりとりを、コント調で大げさに披露している。

 ひとしきり騒ぐと、2人は反対方向のバスに乗って帰って行った。入れ替わりで女子たちの乗ったバスがやって来た。彼女らのいつも乗るバスは、事故で道が通行止めになってしまったらしい。

 遡っていくと、川の澄んだ水の上に、布団が敷かれている。その布団を越えると、少し間隔を開けて、また別の布団が敷かれている。そしてその布団を越えると、さらに別の布団、というように、たくさんの布団が列をなして、川の上に敷かれている。それぞれの布団の横には、ダンボールが置かれている。水上の布団は、ダンボールから飛び出してきてしまったにしては、妙にきちんと整えられている。事故で亡くなった人々を供養しているのではないか、という話をしながら、私たちは川をのぼっていく。

230814

 いつものように自分の上履きを受け取って、作業場まで移動する。私は回転椅子に座って高速でタイヤを回しながら進む。今日は、少し変わった人として広く知られている人が、後ろから来ていて、追い付かれないか不安になる。

 今日は友人が主任する作業の補佐として参加する。まだみんな来ないので、ヘラで床の地衣類を剥ぎ取って横に積み重ねていく。ペラペラでのっぺりとした円盤のシールのような地衣類。

 遅れてやってきた気怠げな女子2人組に、友人が説教を始める。普段の明るいトーンとは打って変わって、とても声が低い。怖い。女子2人組は、途中で小腹が空いたから何か食べてきたらしい。友人の咎めに歯向かっている。

 私は彼らの邪魔にならないように、傍にしゃがんで一眼レフをセットする。これはウガンダのプログラムだが、日本が舞台だから建物がとても綺麗。看板も当然日本語である。

 化粧水など顔につける美容液は、感染症拡大予防のため、屋外の使用のみ可とされている。

 なにか手伝えることはないかとうろうろする。キッチンにはさっきの女子のひとりが立って、みんなの夕飯を準備している。手伝えることはないかと尋ねると、野菜を切るなどの指示を出すより、自分で思い通りに切って動いたほうが都合がいいとのこと。たしかに2人で作業するにはスペースが狭い。机にも物がたくさん乗っている。

 彼女はガーリックの薄切りがないか探している。確かにパスタには必要だ。私も冷蔵庫、棚をあさる。以前からここを使っている人たちの私物から拝借しようとするが、賞味期限が一年切れているヨーグルトが奥にあるのを見つけ、やめる。

 棚には写真入れが多数。定期的に祖父母に送っていた写真もここにファイリングされている。いつの写真か何も書かずに渡していたが、インデックスをつけてあげるべきだったと思う。

 私は先ほどから、自分が思ったことをそのまま口に出していたことに気づく。ボケると独り言が多くなるなどと言うが、こうして省みると、ボケが始まったのではなく、こちらの伝え方が適当だったのが原因なのではと思えてくる。

230809

 ひどく苦しい晩であった。熱はとうに下がったのに、咳だけがゴホゴホといつまでも止まらない。一度始まると、吐きそうになるまで咳き込み続け、そばに置いてあるお茶を無理やり流し込んで止めるほかはないのである。

 ただ、私には、なぜ自分が咳をしなければならないのか、明確に分かっている。それは口で説明するのは難しいけれど、一度これを目にしてしまえば、はっきり分かる。まさしく一目瞭然なのである。

 私は同居する家族に、夜中にうるさく咳をするべき理由として、これを説明する必要があると感じている。だが、一目見せれば伝えられるそれは、私が目を開けると、途端に消えてしまうのだ。目を閉じるとすぐにくっきり姿を表すのに。

 写真撮っておくことも考えたが、カメラを持とうと目を開ければ、それが消えてしまい、それを見ようと目を閉じると、カメラを動かすことができない。仕方がないので詳細に言葉に綴ろうと思って目をつぶっているうちに、いつのまにか朝になっていた。咳も止まっていた。

 こうして昨晩のことを綴っている今は、何が咳をすべき理由だったのか、忘れてしまった。だが、昨晩の私にとって、間違いなくしっくりくる理由であったことは確かである。タイの王朝が関係していたことも確かである。

230803

 海外旅行に来ている。身分不相応な豪華なホテルに泊まったため、一晩泊まっても、入口の2部屋しか使うことができなかった。なんだかもったいなく感じ、チェックアウトの直前で全ての部屋の中を探検することにした。

 中国の山奥の昔話に出てきそうな畳の部屋や、いろんなジュースの試飲ができるキッチンなど、コンセプトは謎な部屋ばかりだが、時間をかけてそこにいれば、それぞれの良さがわかるような気がする。だが、もう行かなければならない。

 友人との待ち合わせまでまだ時間があるので、近くの美術館へ行くことにした。緑の背景にオレンジの細長い棒とこけしのような顔が特徴的な、瀬尾まいこの本の表紙を横向きにしたものが、有名な絵柄のタペストリーの裏地として、額縁に飾られている。

 トイレにはホテルのロビーのような入口があり、日本人の女性スタッフが6人ほど、フロントに等間隔に立っている。壁や天井、彼らの背後に書かれているロゴ、彼らの制服や整えられた髪型など、全てが高級ブランド店を思わせる。一瞬、間違えたかなと感じるが、トイレで間違っていないようで、スタッフにここで待つようにと案内された場所に立っていると、2,3台ほどのカプセルトイレが右側からすぅーっと入ってきた。

 腰かけると自動でドアが閉まり、ゆっくりと水平に回転しながら、美術館全体をめぐり始めるのであった。前方の壁には縦長にアクリル板が貼られていて、外の様子が見えるようになっている。保険会社のコーナーで、従業員が客と向かいあって座り、営業しているのが見える。

 一周して戻ってきてしまった。館内をまわっている間に用を足す仕組みだったらしいが、外の様子が見えるということは、外からもこちらの様子が見えてしまうということではないのか。よくわからないが、もう一度乗りたいのでどうすればいいかスタッフに尋ねると、「寒い」というボタンを押すと乗り続けられると教えてくれた。