私は目を瞑ってさっきまで見ていた夢を思い出そうとしている。
床に置かれたヒノキの枡に水がなみなみと張られており、イワシの頭に刺した棒が何本か、半分水に浸るように入っている。
(これはさっきまで見ていた夢ではない!このままでは夢の内容を忘れてしまう。せっかく面白いものを見たのに…)
と焦る。
すると突然、
「まあ、ちょっと一息つけ」
と見知らぬおじさんに話しかけられた。
おじさんは床にバーナーを向けて焼き始めた。焼かれたタイルの色がひとつひとつ変わっていく。
おじさんは英語を喋っている。ネイティブな発音でスラスラ喋るのでなんと言っているのかいまいち聞き取れない。耳をそば立てていると、”sorrow”という単語をなんとか聞きとれるくらいである。