教職課程を履修しているメンバーで大学のキャンパス内を歩いている。圃場前の建物を見つけ、
「地学実習のときの建物だ!あの実習は楽しかったねぇ…」
と私が懐かしむように言うと、
「いや、何も覚えてない。というより、俺ら何もしてなくなかった?」
とメンバーのひとりが返してきた。
そういえばあの実習では、望遠鏡のセッティングから星の捜索まで全部TAに任せて、我々は部屋で談笑したり眠ったりしていたのだった。途端に罪悪感が湧き、そばにいる友人に泣きつく。
「あなたは凄いよね、いつも働いてて偉いよね。」
まるでそうすることで怠惰だった自分が許されるかのように。
みんな先に帰ってしまい、がらんとした教室に佇んでいる。鏡に映る自分の姿を見る。上下とも昔着ていた紫と緑のチェックの柄で、パジャマのように見える。そのまま廊下に出ると、どこかの店の女店主がいて、私を恋人に合わせて趣味を変える女だと言ってくる。短く否定して外へ出る。
前方にウクレレを奏でながら歩いている男がいる。
「父もやっているのですが、そこまで綺麗に弾けないんです。どうやったらそんなに上手になるのですか?」
と尋ねる。男は何か一言返すが、よく聞こえない。
建物に戻ると、教授の秘書さんが次の担当者への引き継ぎをしている最中であった。教授と秘書さんの机はすでにどこかへ片付けられていた。もう年度末だからだろうか…。前任者がやり残した仕事を今年度中に片付けるためだけに雇われて、自身が十分な引き継ぎの無いなか手探りで仕事をしていることを知っているので、少しでも手伝えることがあればと思うが、私にできることは何もない。
教室に戻ると、他学科の教職メンバーがいた。今日は面接だったらしく、待ち時間に起こった出来事を教えてくれた。待合室の壁のケースの中に、自分の研究の展示が置いてあったそうな。一見CDプレイヤーに見えるそれは、三角のボタンが右左ランダムの向きを指すようにいくつか並べられていて、それが東京協奏曲のメロディを表しているという。しかしその子の見せてくれるCDプレイヤーを見てみる限り、途中からボタンの向きとメロディの高低の関係が逆になってしまっている。
今さら指摘しても何がどうなるわけでもないので、そのまま話を聞く。彼女はそのプレイヤーで自作したというアルバムを見せてくれる。"Spfu Itdor"という、ピンクと青の儚げなデザインのジャケットで、曲調によく合っている。