夢日記

書き留めた夢を文章にして公開しています

220315

 ひょんなことからペットを飼いはじめた。猫とねずみと、黒くて小さい何かである。彼らは初めのうちは警戒心が強かったが、時間を共にするうちに、だんだんとこちらに懐くようになってきた。

 ある日、いつものように彼らと一緒に晩ごはんを食べていると、掃除をしている母がやってきた。母は彼らに気づいていなかったのか、床にいた彼らをみな掃除機で吸い込んでしまった。努めて冷静に、掃除機のゴミパックを開けて、彼らを探していると、母が何か煽るようなことを言ってきた。抑えていた怒りが爆発し、つい怒鳴り声をあげたが、母はきょとんとしていた。

 それから何ヶ月か経ち、黒くて小さい何かは子イルカに成長した。左の水槽で親子イルカが泳いでいる。ふと思う。そういえばこの子は親がいないから泳ぎを知らないのではないか。そんな懸念とは裏腹に、私が子イルカの上にまたがると、彼はジャンプしたり潜ったりして軽快に泳いでくれた。

 我を忘れて楽しく過ごしていると、気づけば周りにも、人を上に乗せて泳いでいるイルカたちがいた。これからイルカのレースが始まる。みんな最後の練習をしているのだ。係の人が我々を見つけて近づいてきた。もうレース開始の時間だ。私は子イルカにがんばれ、と伝え、ゴール付近へ向かった。体育座りをしている人たちの列に加わり、心友の勇姿を見届けるべく膝を抱えた。

220314 - 2

 私は目を瞑ってさっきまで見ていた夢を思い出そうとしている。

 床に置かれたヒノキの枡に水がなみなみと張られており、イワシの頭に刺した棒が何本か、半分水に浸るように入っている。

(これはさっきまで見ていた夢ではない!このままでは夢の内容を忘れてしまう。せっかく面白いものを見たのに…)

と焦る。

 すると突然、

「まあ、ちょっと一息つけ」

と見知らぬおじさんに話しかけられた。

 おじさんは床にバーナーを向けて焼き始めた。焼かれたタイルの色がひとつひとつ変わっていく。

 おじさんは英語を喋っている。ネイティブな発音でスラスラ喋るのでなんと言っているのかいまいち聞き取れない。耳をそば立てていると、”sorrow”という単語をなんとか聞きとれるくらいである。

220314 - 1

 教職課程を履修しているメンバーで大学のキャンパス内を歩いている。圃場前の建物を見つけ、

「地学実習のときの建物だ!あの実習は楽しかったねぇ…」

と私が懐かしむように言うと、

「いや、何も覚えてない。というより、俺ら何もしてなくなかった?」

とメンバーのひとりが返してきた。

 そういえばあの実習では、望遠鏡のセッティングから星の捜索まで全部TAに任せて、我々は部屋で談笑したり眠ったりしていたのだった。途端に罪悪感が湧き、そばにいる友人に泣きつく。

「あなたは凄いよね、いつも働いてて偉いよね。」

まるでそうすることで怠惰だった自分が許されるかのように。

 みんな先に帰ってしまい、がらんとした教室に佇んでいる。鏡に映る自分の姿を見る。上下とも昔着ていた紫と緑のチェックの柄で、パジャマのように見える。そのまま廊下に出ると、どこかの店の女店主がいて、私を恋人に合わせて趣味を変える女だと言ってくる。短く否定して外へ出る。

 前方にウクレレを奏でながら歩いている男がいる。

「父もやっているのですが、そこまで綺麗に弾けないんです。どうやったらそんなに上手になるのですか?」

と尋ねる。男は何か一言返すが、よく聞こえない。

 建物に戻ると、教授の秘書さんが次の担当者への引き継ぎをしている最中であった。教授と秘書さんの机はすでにどこかへ片付けられていた。もう年度末だからだろうか…。前任者がやり残した仕事を今年度中に片付けるためだけに雇われて、自身が十分な引き継ぎの無いなか手探りで仕事をしていることを知っているので、少しでも手伝えることがあればと思うが、私にできることは何もない。

 教室に戻ると、他学科の教職メンバーがいた。今日は面接だったらしく、待ち時間に起こった出来事を教えてくれた。待合室の壁のケースの中に、自分の研究の展示が置いてあったそうな。一見CDプレイヤーに見えるそれは、三角のボタンが右左ランダムの向きを指すようにいくつか並べられていて、それが東京協奏曲のメロディを表しているという。しかしその子の見せてくれるCDプレイヤーを見てみる限り、途中からボタンの向きとメロディの高低の関係が逆になってしまっている。

 今さら指摘しても何がどうなるわけでもないので、そのまま話を聞く。彼女はそのプレイヤーで自作したというアルバムを見せてくれる。"Spfu Itdor"という、ピンクと青の儚げなデザインのジャケットで、曲調によく合っている。

220312

 お風呂に入ろうと地下へ降りると、薄暗い座敷が広がっていた。奥は暗がりで、終わりが見えない。手前の洗い場に座ってシャンプーをするが、折角だしこのだだっ広い空間を使い尽くそうと思い、髪をゴシゴシ泡立てながら奥の方へ進むと、センサーが反応して奥のコーナーの明かりがついた。

 手前の壁にはシャワーヘッドが掛けられていたものが、奥では全て何かの機械に置き換わっている。向こうの壁際には巨大な顕微鏡もある。アリアナ・グランデが入ってきたという入口が、当時のポスター写真とともに展示されている。畳がちょっと泡立っているのを見て、これらの機材は撮影用で、巨大な顕微鏡のように見えたものは、畳に吹きつけて吹雪を演出するためのものであると気づいた。

220211 - 2

 商店街の中にある飲食店でバイトをしている。店の入り口に置かれている食品サンプルを観察し、たまに配置を変えたりする。ほとんど何もしていないが、これで仕事をしている気になっている。お客さんに水を出していないことに気づき、急いで水を汲む。

 バイトが終わったとき、部活の同期がやってきた。我々はもう引退しているが、今日は監督が来る練習日らしく、他の同期も何人か参加するらしい。その気ではなかったが、自分も顔を出すことにした。

 バイト先のロッカールームは練習場のロッカールームと兼用になっている。自分が道衣をどこにしまっていたか、思い出せない。壁に掛けた私のコートの隣に、後輩2人のコートが並べて掛けられている。3人とも赤いセーターの上に青いコートを掛けているので、同じ色合いが横並びになっていて面白い。自分のコートのポケットの中から、ロッカーの鍵を取り出す。

 肝心のロッカーの場所が未だにわからない。その辺の扉を鍵で開けると開いたが、中身は空っぽである。セキュリティに不安を覚える。ロッカーの数が足りないため、途中から各自が自由に持ち込んだロッカーがごちゃごちゃと置かれている。金属製の錆びついた棚を片っ端から開けていく。

 ミニーマウスの絵柄が描かれた棚を開けると、道衣があった。着ようとするが、太りすぎてしまい、帯が全く締まらない。一度固結びをしたまま、これでいいやと外へ出た。商店街の向こうから、他の同期がやって来た。よく知らない後輩も横にいる。適当に話をして、先輩らしくあろうと振る舞う。

 練習が始まり、運用法の時間になった。全く思うように動けないが、相手の動きものろのろしている。技をかけられそうになったのでそれっぽく抵抗したら、存外にうまくいき、重心の動きを意識しながら相手の肩を落としていった。相手はわざとかかっているかのようにゆっくりと伏していく。

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220211 - 1

 某ゲーム実況者が中学生だったころ、私もその実況者の通う学校の生徒であった。梅雨が明けたばかりの晴れた日の朝、長い石段を登って学校へと向かっていた。前にはだらだら喋りながら歩く学生たちがいる。どこかに例の実況者もいるのかと思うと少しわくわくした。

 右手に建つ小さな小屋の前まで来た時、自分の本業を思い出した。自分も生徒のつもりで歩いていたが、今日からこの特別学級で講師をすることになっていたのだ。本校舎へ向かう生徒たちの波から外れ、小屋への階段を上がった。すでに何人か生徒たちが入口前に集まっている。私が鍵を持っているのだから、先頭にいるべきだったのに。初日からいろいろ忘れているので、先行き不安である。慌てて鍵を開け、中へ入ると、木造の感じのいい教室である。 

 私は数学と英語を混ぜたような教科を担当することになっているのだが、今日何をすればいいのか、早速わかっていない。

「前回の授業で宿題とか出された…?」

などと一番前の生徒に聞いてみたりしてなんとか取り繕う。

 生徒が見せてくれた教科書のページをたよりに、なんとなく黒板に表を書く。

" Date / Name of port / Location / Contents / ..."

いかんせん列数が多いので、黒板に入りきらずに何度も消して書き直しをする。

 一番前の生徒がひとり、教科書すら出さずにいるので、近づいて、興味を持ってもらえるよう画策する。

「少しずつでいいんだよ。まずはとりあえず教科書を開くところから…」

語りかけるうちにだんだん熱がこもりだす。

「…この問題のポイントは、覚えるべき英単語とそうでない英単語を見分けること。例えば、コンテナ内の商品名は覚える必要はない。それがわからなくても問題は解けるように設計されているわけで…」

 深々と頷きながら話を聞いてくれる子がいるのが、傍目にわかる。我ながらいいスタートを切れているように思う。

220206

 横浜市で新たに定められたゲーム条例は、当時流行っていた通信型人生ゲーム機から発せられる電波に、物理的な制限をかけることを可能にする効力を持っていた。この条例のせいで、市内の子どもたちの持つ人生ゲーム機では、結婚から先のイベントに進むことができなくなってしまった。

 そのような中、ある日の新聞の一面に、中学生グループが条例の規則をかいくぐって通信を成功させたという記事が掲載された。横浜駅の階段を警察に誘導されながら登っていく6人の女子中学生の後ろ姿が写真に収められていた。

 私はその記事を眺めているうちに、まるで自分が今横浜駅で彼らの後ろをついて歩いているような感覚に陥った。ふと時計を見ると、日付が変わろうとしている。終電はもう行ってしまったみたいだ。

 仕方がないので駅直結のホテルへ向かう。今から予約できないかと動く歩道を歩きながらスマホを開く。母から大量のLINEが来ているのが目に入る。深夜まで連絡がないので大層お怒りの様子。慌てていると、とうとう電話がくる。反射で通話ボタンを押してしまい、怒られながら歩く。

 ホテルの中には体育館があり、今夜はオリンピック会場として使われている。中央部のステージを丸く囲む形で観客席がセットされており、各チームの席を仕切るように、ロープでできた網が掛けられている。場内に設置されたたくさんの照明がステージを煌々と照らしている。これから始まろうとしている雰囲気である。

 観客はなぜか母校の生徒が多いように感じた。みな現役の生徒なのだろうか、ほぼ全員制服を着ている。OG席はまだガラガラだったので、ステージの目の前に座って始まるのを待った。母はテレビの生中継を見ながら私と通話を続けている。

 聖火ランナーの1人目となる選手が私の目の前に立っている。短距離走の島津○人選手である。某筋肉ユーチューバーに似た童顔マッチョの選手である。彼は非常に人気の選手で、今回の大会の期待の星である。彼を見上げると、天井の照明が逆光になっていて、とても神々しいと思った。

 開会式が始まっても、母は画面越しに何か喋っている。たまにスマホを床に置いたり、たまに耳に当てて適当に相槌を打ってみたりする。母はそばにいる誰かの話し声を、私の返事だと思ったりしているようである。テニス選手が聖火でラリーをしている実況が聞こえてきた。気がつけば母との通話は終了していた。

 夢から醒めた。さっきまで夢の中で見ていた出来事を回想しているとき、島津選手は大会直後に34歳という若さで亡くなっていることを思い出した。確かオリンピックのために、特別に食事とお酒の量を普段の2倍にしたのが原因であると言われていた。本人がオリンピック開始前に、横浜名物の「みちのく弁当」を2倍にした「住人弁当」を食べるツイートをしていたのだった。

 そういえば母も、彼はすでに亡くなっていると電話で言っていたような気もする。この一連の流れは、もう一度私がさっきの夢を見て、彼に住人弁当を食べるのをやめさせろという神の暗示かと、もう一度眠る体制に入った。