某国際的な祭典の真っ最中、現職の総理大臣が公的資金を私的利用していたというニュースが流れた。この問題に対する街頭インタビューがテレビで放映されており、私はそれを眺めていた。この問題をきっかけに、今までくすぶっていた国民の怒りは頂点に達し、どこからともなく「革命を起こそう!」という声が上がり始め、気がつけば国民全体が国家権力の転覆に向けて動き出しているようであった。
革命の方法として国民が選んだのは、現在進行中の某国際的祭典を利用するというものであった。この祭典が終わるまでに署名を集め、閉会式で我々国民の意向を世界に表明することで国際的な支持を獲得しよう、という寸法であった。というわけで、最近は私も含め、参加者各々署名集めに奔走しているのである。初めはSNSで呼びかけを行っていたのだが、もっといい方法があるということで、私は仲間によって外に連れ出された。
我々は京都駅の中を通ってどこかへ向かっている。ところどころ荒れていて治安が悪い様子である。例えば駅構内には巨大な牛バルーンが浮かんでいるのだが、銃を構えた人が1階からバルーンめがけて何発も発砲し、バルーンを撃ち落とそうとしている。牛バルーンはかなり頑丈な造りになっているらしく、どれだけ銃弾を撃ち込まれても、弾が分厚い皮を貫くことはなく、バルーンは跳ね上がって天井や壁にぶつかり、また跳ね返って、とあちこち暴れまわっている。
階段を上ると、ガラス張りの壁の向こうに巨大な広告ポスターの掲示板が掲げられているのが見える。華やかな広告が全面に貼られている。掲示板の上に何人か乗っており、ポスターの上辺を叩き、手に持っている何かを流し込んでいる。すると華やかだったポスターが、真っ黒な背景に不気味な人の顔がでかでかと映っているモノクロ写真へと変貌した。どこか悲しげなその顔を呆然と眺めていると、横にいた母に「おまえもいずれこうなるよ」などと不吉な予言をされた。
目的地に着き、我々はある部屋に通された。この部屋にはさまざまな仕掛けが施されており、それらを順番に解いていく必要があるらしい。脱出ゲームのような要領だろうか。早速取り掛かるが、何一つうまくいかない。手順を間違えるとどうなるのか、何も分からない。恐ろしくなるが、管理人はもう部屋を出ていってしまい、連絡を取ることはできないため、今さら止めることもできない。もうすぐ閉会式が始まる。時間がもうない。何もわからない。革命なんて全然無理そうだ。