夢日記

書き留めた夢を文章にして公開しています

210917

 部活の展示ブースに座って学祭で賑わっている校内をぼけーっと眺めていた。特にお客さんも来ないしやることなくて暇なのだ…。生徒のはしゃぎ声を子守歌にうつらうつらしていると、突然目の前の長机の真ん中に直系1メートルほどの大きな穴が現れた。穴の中は真っ暗で下から風が吹き上げてくる。シフトに入っていた私たち3人は立ち上がり、穴の中へ迷うことなくダイブした。こういったことは別に初めてではなく、何度か経験するうちに次に何をすべきか考えずとも動けるようになっていた。

 この穴は異世界への入り口であり、私たちが飛び込んだ後は閉まるようになっているのだが、今回私が2人に続いてダイブした後、向こうから走ってきた何者かが、閉まりつつある穴にするりと飛び込んできたのが見えた。異世界は地底のような暗く閉塞感のあるところである。私はしばらくの間、後から入り込んできた男の様子を伺うことにした。

 男はまず海の生き物が展示されているケースのガラスにぴったりと貼り付き、しばらくじっとしていた。物陰からよく目を凝らすと、男の体はじわじわとケースの壁に取り込まれていった。男は物に溶け込む特殊能力を使って、展示ケースの中に入り込もうとしているのだ。ちなみに展示ケースは二重構造になっていて、外側のケースの中には管理人が3人と、海の生き物が暮らしているケージが入っている。ケージは横についているコックを外すことで開けることができるが、部外者が勝手に開けることの無いよう、ケース内の管理人がケージのすぐ横の部屋で監視しているのだ。

 管理人のいる部屋は車のように前と後ろに座席が分かれており、前の座席に上司が2人座り、その部下が1人後部座席に座っている。今日は部下の研修の最終日で、うまく管理業務ができるか上司2人が見守っている。後部座席に研修を受けている部下が座っているのは、その席がケージから一番近くにあり、監視も侵入者の取り押さえも素早く行うことができるからである。

 部下は連日の仕事の疲れがたまったのか、うつらうつらしている。前にいる上司2人は部下のその様子を見てニヤニヤしているが、部屋の外の様子には全く注意を払っていない。ケースが二重構造になっていることもあり、まさかこんなところに侵入する奴がいるはずもないと、軽く考えているのだろう。ケースへの侵入を果たした男はそのまま忍び足でケージに近づき、コックを開け始めた。

 私はこの男の侵入を許し、男の働こうとしている悪事を手をこまねいて見ているだけの自分に罪の意識を抱き始めた。私の心は弱く、物陰から飛び出して男の存在を管理人に知らせる勇気が出なかった。私は関係者だと思われたくなかったので、くるりと踵を返し、できる限り早くこの場を離れることにした。歩き出すとすぐに後ろの方から

「エビやカニが逃げたぞ!!」

という声が聞こえてきた。私は焦ってさらに速く歩いた。電車の中のような狭くて長い通路を抜ける。ドアを開けるたびに治安が悪くなっていき、人の数も増えていくため、どんどん前に進みづらくなる。両側からたくさんの手が伸びてきて私の行く先をふさごうとしてくる。これらは全て、エビやカニが逃げたために起こっている。私が男の侵入や悪事を許したからだ、と自責の念に駆られる。

 何枚目かのドアを開けると、そこは終着点であった。狭くて暗い車内から一変して、広々として明るいスーパーの中に出た。歩みを進めるたびに悪くなっていた治安はすっかり良くなっていた。私は買い物かごを手に取り、陳列されている肉や魚を眺めて歩いた。途中で小学校の同級生に会ったので、一緒に買い物をしながら戻ることにした。