夢日記

書き留めた夢を文章にして公開しています

210410

 部屋で寝ていると、1階の駐輪スペースから、自転車を出し入れする音が何度も聞こえてきた。何をやっているんだか、と夢うつつの中で目をつむっていると、階段を上ってこちらに向かってくる足音が聞こえてきた。隣の人かな、などと思っていると、カチャン、という音が私の部屋の玄関から聞こえてきた。途端、私の心拍数は跳ね上がり、夢の境を彷徨っていた意識は鮮明になった。しかし派手に動くと何があるかわからないので、寝たふりをしながらじっと息をひそめた。

 部屋に入ってきた者が布団をたたいてくるので、仕方なく身を起こしてみると、若い女性と息子らしき少年がベッドの傍に立っている。彼らは、自分たちがとあるおっちゃんに追われていること、私の助けが必要であることを伝えてきた。そのおっちゃんと私は面識がなかったのだが、彼らのお願いを承諾し、おっちゃんのもとへ案内してもらった。

 私はその後のことをよく覚えていない。親子に連れられておっちゃんに会いに行ったことは確かである。おっちゃんはスキンヘッドで、話に聞いていた通り怖い人であったが、なんとか彼らを和解させたことがおぼろげに記憶に残っている。しかし私がおっちゃんとどんな会話をしたのかは全く思い出せないまま、帰路についていた。

 私の住む家は4階建てのアパートから高層マンションの最上階に変わっており、外階段を上ってもうすぐ自分の部屋の階に着こうとしている、とそのときであった。私の進む先にあのおっちゃんが立っているではないか。おっちゃんは私に対して暴言を吐きだし始めた。(さっきのことで怒っているんだ…)と怖くなり、逃げ出したくなるが、(どうせ逃げてもまた追いかけてくるに違いない。やられる前にやれ…!)と思い、おっちゃんに掴みかかった。

 私がおっちゃんだと思って掴んだのは、額縁であった。額縁にはおっちゃんの顔がすっぽりはまっており、その状態でなおも暴言を吐き続けている。私はおっちゃんに息を吹きかけた。おっちゃんを黙らせるにはこうするより他にないことを知っていた。何度も何度も力いっぱい息を吹きかけていると、だんだんおっちゃんの顔から水分が抜けていき、干からびてきた。私はがむしゃらに息を吹きかけ続けた。いつの間にかおっちゃんの声は聞こえなくなり、額縁の顔はまるでミイラのようで、もう誰なのか判別できなくなっていた。